かぶと山から眺める小天橋
丹後の西側に位置する「久美浜」 天橋立に似た地形の「小天橋」がある、非常に景色が綺麗な場所である。
日下部農園さんは、ここ久美浜にて「桃」「梨」「ブドウ」の3種類を主に栽培をしている果樹 農家である。桃だけで5品種、梨とブドウは各10品種以上を栽培している。
ぶどう畑
日下部太郎さんは、この農園の4代目にあたる。 高校卒業後大学から東京に行き、卒業後は食品関連の企業に勤めた。 その後、果樹研究所にて農業を学んだ後、2017年の4月より、実家の久美浜に戻り果樹の栽培に 従事している。
日下部農園・日下部さん
日下部農園の歴史は古く、90年ほど前に、太郎さんの曽祖父にあたる方が、果樹栽培を始めら れたのが起源となっている。
日下部農園の耕地面積は、梨が一番広く、約2ha。
*1haは100m×100m
続いてブドウが約1ha。桃が約0.5haという農地を管理されている。 この広さの農地を、家族4人に加え、時期によって多いときには10名以上のスタッフの方々の協 力を得ながら管理されている。
梨畑
太郎さんに、日下部農園のフルーツ栽培の特徴を聞いてみると、 「基本に忠実に」「当たり前のことを当たり前にする」という答えがかえってきた。
果樹栽培において、この「当たり前のことを当たり前にする」ということが、いかに大変なこと かは、一緒に栽培を手伝わせていただくと、身をもって実感することができる。
ここで、梨を例に1年間で果樹栽培にはどのような仕事があるか簡単にお伝えしたい。
繰り返しにはなるが、日下部農園さんでは、「二十世紀」や「新興」といった品種の梨を、年間 通じて10品種以上育てている。 収穫できる時期としては、8月の中旬~11月までで、販売は12月末まで。 品種を変える事で、収穫できる時期をずらすように調整して育てている。
梨の栽培は、冬に行う土作りから始まり、交配、間引き、袋掛けなど、全部で10工程ほどの作業 がある。袋掛けを例にとると、一つ一つの梨に袋をつけていく作業が二十世紀だけで約10万個 分もある。1回目の袋掛けをゴールデンウイーク頃から行い、なしの生育に合わせて2回目を6月 いっぱいかけて行うというから驚きである。
果物の栽培で大変な点は何かを太郎さんに聞いたところ、「果物作りは、自分はまだ始めたばか りで分からないが、父は忍耐力が重要と言っている」との答えが返ってきた。 具体的には「果物の栽培は、手作業が多く、全てを人の手で行わなければならない。」「一つ一 つの作業は簡単であるが、その一つ一つの作業をコツコツ行うことが大変。」ということも教え ていただいた。
果物の1個1個をしっかり見て作業をしていかなければならない点に、果物栽培には愛が必要なの ではないかと感じた。
ちなみに、今年は梅雨も含めて夏場の雨が少なかったため、小ぶりの梨が多いが、その分糖度は 高いだろうとのこと。
美しく実る梨
最後に、太郎さんに今後の展望を伺ったところ、 「今後まずは基本的な栽培技術をしっかりと習得し、その上で将来的には生産量を増やしていき たい」との答えが返ってきた。
久美浜は果樹農家が多い地域であるが、高齢化や後継者不足により、周りの農家の数が減ってき ている現状がある。 そうした問題を抱える中で、「生産量が減ると産地の力が落ちてしまう。10年後20年後に現 在の生産量を維持/発展させるために、何ができるのか考えることが必要」と危機感を募らせてい た。
どこの地域でも「生産者不足」という問題がだんだんと深刻になってきている。 生産者さんだけがこの問題を考えるのではなく、私たち消費者も自分たちにできることを考えて いく必要があるのではないだろうか。
現在、果樹栽培や農業についてのレクチャーをしていただきながら、梨狩りをするスタディツアー を日下部農園さんと共同で開催している。 ツアーで生産者さんより直接果樹栽培について教えていただくと、「ひとつの美味しい梨」が、「よ り美味しい特別なひとつの梨」になる。 普段なかなか触れることのできない、本物の食の生産現場に触れてみるのはいかがだろうか。
<ツアー概要>
◽日時9/23(日)14:00~
◽価格
2000円/人
*梨のお土産5個つき *当日会場にて直接お支払いただきますようお願い申し上げます。
◽申込方法
TEL or MAILにて事前申込をお願いいたします。
TEL:070-4286-8236
MAIL:kyotango.taberu@gmail.com
*当日参加も可能です。お電話にて確認いただいた上、直接日下部農園の直売所までお越しくだ さい。
関 奈央弥
京丹後市・網野町出身
栄養士として東京で活動する傍ら、地元丹後の美食材にフォーカスした「tangobar」を立ち上げ食育を通じて新しい風を巻き起こしている。生産者にしっかりと向き合いストーリーを伝える活動は、次世代の姿であり、今後の活躍がとても楽しみな1人でもあります。