MENU
CLOSE

土地の命を食べて生きる  上世屋獣肉店 Living by eating the life of the land

猟師 小山愛生さん一家 地域のイベントで上世屋の暮らしを伝える

肋骨を一本ずつ外していく
薄皮を剥がし、骨を断ち、筋を切る
脚や胴体の形をしていた肉は
街で見かけるかたちになった

こんにちは。PARANOMADデザイナー原田美帆です。ジビエ、山野を駆け巡っていた猪や鹿を食べる。その時、大地のエネルギーが身体に流れ込むように命が満ちる感覚を覚えます。

猟師 小山愛生さんに頸動脈をつかれた猪は、震えながら意識を失いました。心臓が動いている間にと血抜きをする愛生さん。赤い血が地面に滴り染み込んでいきます。解体小屋に運び込み毛皮ごと洗浄し、内臓を取り出し大きな塊に解体して、冷蔵庫で軽く熟成させた後に部位ごとに切り分けます。薄桃色に鮮やかな赤が浮かび上がる肉のきれいなこと。雪のように溶けてなくなりそうな白色が散っていました。

京都市内でサラリーマンをしていた愛生さんは、宮津支局への配属を機に上世屋集落の存在を知ります。天橋立から車でわずか20分、築70年を越すトタン屋根の古民家が見えてきました。少し奥に入ると、笹葺きの古民家も残っています。この辺りでは笹が多く集められたので笹葺が一般的だったそう。屋根は冬の積雪を予感させる急勾配。棚田の向こうには日本海が広がり、稲木に干された稲が黄金に輝く。古代布の藤織が伝承されてきた里でもあります。ある日、取材で「バイ投げ」と呼ばれる猟法と出会った愛生さん。ヒノキや杉の枝を丸めたものを雪穴近くにいるウサギに投げつけると、驚いたウサギが雪穴に飛び込む。その穴から手づかみでウサギを捕らえる昔ながらの方法に「自然と環境を利用した完璧なもの」と興味をもち、市内の猟友会にも入るほどのめり込んでいきます。

丹後半島の中でもいっそう固有の風土と、そこに暮らす世屋人(せやびと)のたくましさにも惹かれていきました。会社勤めを続けながら都市と上世屋を行き来し、田んぼを借りて米作りを始めます。「農家になりたかったわけではなくて、ここに住むなら“田んぼ”がコミュニティの中心だから」。会社を辞めて移住してからも、地元の醸造会社の酒蔵に入ったり、契約農家として米を栽培したり、狩猟で生計を立てられるとは思っていませんでした。機械の入らない棚田の世話に地域の行事、冬になる前の薪割りや雪囲いと、毎日はあっという間に過ぎていきます。上世屋の住人は約20人、そのうち半分が移住者になっていました。「ここの暮らしを維持するには移住者が必要」。直面する課題に、ある考えが浮かびます。「狩猟を移住者の生業にできないか」。


愛生さんが育てる田んぼ

昔から猟師の間では「上世屋で獲れる猪や鹿は、若くても大きく育って脂の質もいい」と言われていました。豪雪のせいで植林が少なくブナなどの雑木林が残された山には豊富な木の実があり、それを食べて育つ猪や鹿の肉質はドングリを与えられるイベリコ豚にも例えられるほどだったのです。世屋人と話し合い、さまざまな協力を得て愛生さんは簡易獣肉解体施設「上世屋獣肉店」を完成させました。「ここの特徴は規模が小さいことです。維持費も少なくて済むから、気に入った山で獲れた気に入った個体を選ぶことができる。質のいい肉を料理人に渡せる」。愛生さんのジビエは、既に丹後の料理店で提供されています。臭みがなく、柔らかくて甘い。そして何より、命の力の強いものを食べているという実感が湧いてきます。彼らが駆け巡っていた山の命を受け止めて、噛みしめる。


「世代の近いシェフが良い素材だと料理してくれるのが嬉しい」

惹かれ続けた狩猟が、生業となった愛生さん。野生の肉の美味しさ、獣と対峙する狩猟という文化、世屋人という生き方…いくつものメッセージを胸に、上世屋獣肉店を営んでいます。


小山愛生さんと上世屋獣肉店

原田 美帆
与謝野町在住
インテリアコーディネーター・現代アートスタジオスタッフとして活躍し、2015年からは丹後・与謝野町に移住と共にデザインスタジオ「PARANOMAD(パラノマド)」を設立。織物は彫刻という独自の視点でカーテンを始めとしたテキスタイルを制作。また、マニアックな所まで的確にレポートするライターとしても活躍中。そんな彼女の美と食の記事は今後とても楽しみであります。
PARANOMAD

INFORMATION

名称
上世屋獣肉店
Name
kamiseyajyunikuten
住所
京都府宮津市世屋
Address
kyoto,miyazu-seya
URL
https://kamiseya.com/internship/shuryo
Url
https://kamiseya.com/internship/shuryo
名称 Name
上世屋獣肉店 kamiseyajyunikuten
住所 Address
京都府宮津市世屋 kyoto,miyazu-seya
URL Url
https://kamiseya.com/internship/shuryo https://kamiseya.com/internship/shuryo
  • TOP
  • FOOD
  • 織元が見出す絹の未来 株式会社ワタマサ