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創業240年の酒蔵で挑む新しい酒造り〜美味しいお米が美味しいお酒になる〜 A new sake brewing challenge in a sake brewery that has been in business for 240 years

丹後が好きになる情報誌Bits編集長の京近です。これから私が紹介する丹後1ページ。それは・・・

丹後地方には多くの酒蔵があります。全国的にみても、これほどの蔵がかたまってあるところは灘や伏見を除いてそう多くはありません。いい水があっていい米が作れるところだからというのもあるでしょう。

古く江戸時代、一つの集落にはそれぞれそこで消費する酒を造る蔵があったと言います。「容器を持って蔵に行き量り売りで酒を買ってくる」、そんな消費形態でした。

町場では発達する物流により生産規模も大きく集約が進み、蔵の数は減っていきました。しかし丹後ではそれぞれの蔵が小規模ながらも、特色のある酒造りをしながら生き残ってきたために、多くの蔵がいまだ存在する地域となったのです。

旧来、丹後の酒蔵は但馬地方(兵庫県北部)から冬場だけやって来る杜氏が中心となった酒造りをしていました。しかし世代交代のなかで蔵の若手世代自らが杜氏となって、自分たちで酒造りをはじめています。そして、もはや地元消費だけの酒ではなく、他の地域、都市部をはじめ海外にもその販路を広げて、地酒を超えた酒の産地「丹後」を醸しているのです。


歴史を感じる重厚な外観

京丹後市大宮町周枳(すき)の酒蔵、「白杉酒造」。酒名は白木久(しらきく)です。丹後10蔵の中の一つで、創業は1777年(安永6年)。現在の当主は11代目、白杉悟さん(40歳)。2001年春に大学を卒業して蔵に入られました。

「ただ、酒造りに燃えてという積極的な感じでは無く、漠然と住むなら丹後かな(笑)」

それまで酒造りの常識、知識がなかった悟さんには「なぜ、どうして?」と思うことばかり。尋ねてみても「昔からそうだから」や「それが常識!」と・・・。

例えば米。謂わゆる「酒米」といわれる五百万石や祝を組合から買うと「京都府産」ということしかわかりません。悟さんは思いました。「地酒と言いながら地元のお米は使ってないんや・・・。」

例えば酒を濾過するということ。従来、日本酒には炭をいれて濾過という工程がありますが、「濾過をしない酒造りはできないのか?」

「思えば、小さな頃から酒造りの現場で育った人と、大人になって蔵に入った人の違いかもしれません」と。

2007年11代目を継ぎ、自ら杜氏となって、悟さんの酒造りを本格化。そこではじめたのは従来の常識にとらわれない酒造り。疑問に思って違和感を感じていたことをやめて自らが納得のいく酒造りを始めたのです。

杜氏というのは酒造りのいわば監督。どんな酒を造りたいかを考えてその方法を選び、蔵人たちに指示してつくっていく人。その過程ひとつひとつをわかっていて吟味していかなくてはいけない。今、悟さんは当主として蔵の経営をしていかなくてはならない。同時に杜氏としての造りの一つひとつにも関わり続けていきたいと考えているそうです。造りたい酒のビジョンがありそこに向かう思いと、経験として試行錯誤を重ねてきた中でうまれた自信そのものが突き動かす衝動なのだとお話ぶりからひしひしと伝わってきました。


酒造りの作業は気温の低い冬季の朝早くに行われる

悟さんが丹後に来て思ったこと。それは「ごはんがうまい!」。

京都市内で生まれ育った彼には驚きだったといいます。このおいしいお米でおいしい酒は造れないのか?という素朴な思い。

しかし、調べていくと飯米は粘りが強くタンパク質も多いためにそのままでは酒造りには不向きだとわかりました。

そうして2007年、蔵を継いだ時、試しにコシヒカリでお酒をつくってみました。しかし案の定うまくいかず味の濃い飲み込みづらいような酒になってしまったんだとか。そこで毎年小さな樽に少しづついろんなことを試しながら造り続けていたんだそうです。

ここで、そもそもの話を。酒造りはどんなスパンで行われるのでしょう?秋に収穫された新米を10月ぐらいから仕込みはじめ冬の寒さを利用して発酵をコントロールして造る。そのため春には造りは終わるのです。そう、1年に1回しかつくるチャンスはないのです。だから今年の造りの反省は来年にしかできないのです。

当時の白杉酒造さんでは1級や2級と呼ばれる普通酒がつくる酒の8割を占め、吟醸や純米酒といった特定名称酒は2割ぐらいでした。だからアイデアも普通酒をつくる発想に引っ張られていた部分もあったといいます。しかしそこで米をとことん磨いてつくる大吟醸造りに変えてみたところやっと納得のいくものをつくれるようになったんだとか。

そうして2013年、丹後産コシヒカリとササニシキでつくる「丹後のヒカリ」と「銀シャリ」をそれぞれ発売。雑味を出さずに旨味だけを引き出す、「おいしいお米でおいしいお酒」をつくることができたのです。いまでは特定名称酒と普通酒の割合も逆転して蔵そのものの立ち位置が大きく変わったのです。


丹後産ササニシキ100%の銀シャリ

酒造りにおいて大切なこととして

一、麹(こうじ)

二、酛(もと)

三、造り

といわれています。
この中で麹は一番にあがるようにもっとも大切。蒸した米に麹菌を付着させて、米の中で繁殖したもののことをいい、この麹のできがお酒の質を左右するともいわれるのです。

現在、酒造りにつかわれる麹菌には3種類あって、それぞれ黄麹、黒麹、白麹とよばれます。100年ほど前までは日本酒には黄麹のみが使われていました。吟醸香の強い、淡麗なお酒になるといわれています。黒麹は沖縄の泡盛や焼酎で使われていた麹、白麹は黒麹の変異種として培養されたもので、このふたつには共通する大きな要素があり、それはクエン酸を分泌するということ。


黒麹(左) 白麹(上) 黄麹(右)

悟さんは黒麹のここに着目して雑菌などに左右されない、よりピュアなねらった通りの酒が造れないかと考えました。

そして生まれたのが「酒母黒麹仕込み 無濾過生原酒 BLACK LABEL」です。

コシヒカリと黒麹を使うことで、食用米としての米らしさと上品な旨みを生かしつつ酸がたつことでフルーティーでジューシーな味わいも楽しんで頂けるお酒になっています。


Vibrant 純米酒


brilliant 純米吟醸

白杉酒蔵は、常識には縛られず新しいお酒を毎年リリースしています。好評だったものも更にブラッシュアップ。「米を使ってつくる日本酒というカテゴリー、その可能性はまだまだ拡がっていくと考えています」と悟さん。

飲んだみんなが“えっ”と声を、続いて“何これ?”と驚いたり、“うんうん”と納得したり。アイデアがカタチになる、そんな日本酒がうまれる。なんだか楽しみなお酒の未来。ちょっと覗かせていただきました(笑)。

京近 淳氏
京近淳デザイン事務所の代表であり、丹後の情報誌「Bits(ビッツ)」の編集長
丹後に暮らす独自の視点から、THE TANGOでは宿と酒蔵をレポートしていただきます。ぜひ、美しい写真と共にお楽しみ下さい。趣味は「ブラックミュージックをこよなく愛するベーシスト。セッションのお誘い大歓迎」です。

INFORMATION

名称
白杉酒造株式会社
Name
shirasugi shuzou
住所
京都府京丹後市大宮町周枳954
Address
kyoto kyotango omiya suki 954
電話番号
0772-64-2101
Tel
0772-64-2101
営業時間
9:00〜17:00 13:00〜17:00(冬季)
Business hours
9:00〜17:00 13:00〜17:00(winter)
定休日
日曜・祝日
Regular holiday
Sundays and public holidays
URL
https://shirakiku.shopinfo.jp
Url
https://shirakiku.shopinfo.jp
名称 Name
白杉酒造株式会社 shirasugi shuzou
住所 Address
京都府京丹後市大宮町周枳954 kyoto kyotango omiya suki 954
電話番号 Tel
0772-64-2101 0772-64-2101
営業時間 Business hours
9:00〜17:00 13:00〜17:00(冬季) 9:00〜17:00 13:00〜17:00(winter)
定休日 Regular holiday
日曜・祝日 Sundays and public holidays
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