さて、今回から、丹後でこだわりをもって日々美味しい食材を作られている生産者の皆様のご紹介をさせていただきます。
今回は天橋立を臨む「宮津湾」で漁師をされている「本藤 靖」さんのご紹介です。
*本藤 靖さん。漁船の名前「要丸」は、おじいさんの代から代々本藤家に伝わっています。
本藤さんは、「宮津湾のとにかく美味しい魚介を届けたい」という熱い思いをもって日々漁業に取り組んでいらっしゃいます。
宮津出身で代々漁師の家に育った本藤さん、元々は水産総合研究所の研究者でした。五島列島など、全国の栽培漁業センターでクエの養殖などの研究に従事された後、宮津に戻り、研究者から漁師になられました。25年に亘り研究された、魚の生態に関する豊富な知識と熟練の勘、そして研究し尽くされた知的な戦略をもって日々漁をされています。
本藤さんが漁をされる「宮津湾」は、外洋に比べると餌が豊富で非常に穏やかな、様々な生物が生息する豊かな海です。
*穏やかな宮津湾の風景。すぐ隣には日本三景で有名な天橋立がある
本藤さんは、宮津湾の様々な旬の魚介類を狙い、「美味しさ」にとことんこだわった漁業をされております。
クロダイやアジなどの魚に加え、タコやイカ、ワタリカニ、ナマコ、モズク、アサリやバイ貝、ムール貝などの様々な貝類などなど。
宮津湾には豊富な種類の様々な美味しい魚介が生息しております。
その中でも、1年を通じて取り組まれているのが「トリ貝」の養殖。毎年七月頃に稚貝を入れ、翌年の五月頃まで大切に育てていらっしゃいます。
*本藤さんのトリ貝。味はもちろん絶品。
本藤さんは、一級品のトリ貝を養殖するために、一つ一つのトリ貝を「いかに大きく」「いかに美味しく」育てるかというところにこだわって養殖を行なっております。
*トリ貝の養殖を行う筏
そこで必要になってくる作業が「コンテナの清掃」。トリ貝は以下のようなコンテナに稚貝を入れて養殖を行います。
*トリ貝養殖を行うコンテナ
このコンテナを、筏を使い、水深6メートルほどのところに吊り下げて養殖を行うのですが、数ヶ月放置しておくと海の様々な生物が付着してコンテナが汚れてきます。
*コンテナ清掃の様子
このコンテナを汚れたまま放置しておくと、付着した様々な生物がトリ貝の餌となるプランクトンを奪ってしまうため、トリ貝の生育に影響が出てきます。
そのため、いかにこのコンテナをきれいに保つかということが大切になってきます。
本藤さんは、ここのコンテナの清掃の回数を増やし、こまめに清掃して出来るだけきれいに保管することで、一つ一つのトリ貝を良い環境で養殖し、大きく育つよう工夫を行なっております。
*このように海面からコンテナを引き上げる
しかし、このコンテナの清掃はかなりの重労働。なんと一つのコンテナが約40kgもあります。このコンテナを一つ一つ海からあげて清掃して海に沈めるという作業が必要になってきます。
美味しさの裏側には、「美味しいものを作る」という信念と、それに伴った相当な「努力」が隠されています。
また、本藤さんは、自宅にて「漁師居酒屋」を週末に営業されております。しかも1組限定。
この漁師居酒屋では、本藤さんが宮津湾でとった魚介のみを使用した海鮮尽くしのコース料理を楽しむことができます。
*まずはお刺身から。ボリュームがすごいです。
出てくる食材は、旬のメジャーな食材はもちろん、ほぼ市場に出ないようなレアな美味しい魚介も提供していただけます。
私も様々な美味しい食材を本藤さんに食べさせていただきましたが、一番食べて驚いた食材は、「エイの肝」でした。新鮮な魚の「肝」の味は格別です。
一つ一つの食材が「なぜ美味しいのか」宮津湾の特徴なども踏まえながら食材のおいしさやこだわりについて語ってくださいます。このお話を聞きながらいただく魚介料理の味は最高です。
*こちらは、タコをとるカゴから出てきたカニの殻。良い餌を食べているタコの味は格別。宮津湾のタコは、かなりグルメのようです。
漁師居酒屋の締めの名物がこちらの宮津湾の旬の魚を使った「宮津湾パエリア」
*居酒屋の締めで出てくる海鮮パエリア
魚介をこれでもかと言わんばかりに使用したこちらのパエリア、調味料は香りと色をつける「サフラン」のみを使用し、塩は一切使用しない、味付けが「宮津湾」というなんとも贅沢な1品です。本藤さんの漁師居酒屋は、いつ行っても至福のひとときが味わえる場所です。
以上、食が豊かな丹後、宮津湾のこだわり漁師さんのご紹介でした。
関 奈央弥
京丹後市・網野町出身
栄養士として東京で活動する傍ら、地元丹後の美食材にフォーカスした「tangobar」を立ち上げ食育を通じて新しい風を巻き起こしている。生産者にしっかりと向き合いストーリーを伝える活動は、次世代の姿であり、今後の活躍がとても楽しみな1人でもあります。