車座になって思いを交わす
熱くて、蒼い言葉が
合唱のように響いていく
こんにちは、PARANOMADデザイナーの原田美帆です。
丹後が誇る海山の幸、日本酒、着物文化を支える織物産業。THE TANGOでお伝えしている「丹後の価値」は世界に誇れるものばかり。キリン株式会社の取り組む「地域創生トレーニングセンタープロジェクト」フィールドワークから浮かび上がった丹後の姿をお伝えします。
(「丹後の「世界品質。」キリン地域創生トレーニングセンタープロジェクト前編」も合わせてご一読ください。)
与謝野町阿蘇海からのぞむ天橋立
見て、体験して、食べて、話して。
イタリア料理店「aceto」、丹後の手織りネクタイ「KUSKA」、丹後ちりめん工場「ちりめん歴史館」、伊根「向井酒造」、CAF&BB「guri」、魚菜料理「縄屋」、「Bar Belini」、「竹野酒造」、「農家パン弥栄窯」、「丹後ジャージー牧場SORA」、鴨しゃぶ「柳町」…名勝と現場視察、美食で構成された3日間。これまでも各地のフィールドワークで時間を共にしてきたメンバーには同級生のような雰囲気が漂い、大人の修学旅行のよう。一見してクールで現代的な経営者たち。彼らはどうしてトレセンに集うのか、不思議に思う方もいらっしゃるでしょう。競争や審査、評価のためではありません。単なる視察でもビジネス交流会でもない。地域の課題が解決する特効薬がいきなり見つかることもありません。それでも年に何度も地方へ赴く。
丹後ジャージー牧場SORAと農家パン弥栄窯がコラボレーションした朝食
最終日に設定された会議では、地域を引っ張り上げようと挑戦する経営者たちの、普段は聞くことのない不安や迷いが伝えられました。「日本三景 天橋立。一生に一度は来たいと言われてきたけれど、日帰りバスツアーで立ち寄るだけの人がほとんど。天橋立という大きすぎるコンテンツが、地域の持つ多彩な魅力を見えにくくしている」。メンバーからは「他の観光地でも見受けられる課題」だという声や「町全体の魅力でリピーターが生まれているところもある」といった事例も挙げられました。やがて、1人また1人と飾らない言葉が重ねられていきます。
加悦谷平野に広がる田んぼ風景
「ツーリズムを紐解くと、人と会う、出会えること。
僕たちの草の根のような繋がりの“点”が“線”へと伸びつつあって、世界を飛び回っている人たちに絶対の満足を提供できている。それが全て」。(竹野酒造有限会社 行待佳樹)
「積み重ねで自分の目指す品質になる。少しずつ、少しずつ。それぞれが世界最高品質になっていけばいい」。(魚菜料理縄屋 吉岡幸宣)
「世界に向けて尖った行動をしないと生き残れない“小さなもの”の戦略を地域と社員と分かち合うにはどうしたらいいのだろうか」。
「この仕事で、社長との“答えあわせ”はできない。とりあえず僕らにやらせてくれる。結論を受け止めた上で社長の考えを伝えてくれる」。(株式会社飯尾醸造 飯尾彰浩と社員)
日本海に浮かび上がる飯尾醸造の棚田
まっすぐに交わされた想いに場が熱くなり、リレーバトンのように言葉が続きます。その時、ひときわ大きな声があがりました。「 “世界品質”の指す“世界”とは、“自らの世界”のことではないか」。遠くにあると思っていた「世界」が一瞬にして身体の内側に転換したような錯覚に、会場が静まります。自分にしか、この会社にしか、この地域にしかできないことを磨き抜けば、日々の仕事が世界そのものに変化している。ここに集うメンバー全員の苦労も喜びも全てを肯定する言葉に締めくくられて、フィールドワークはいつしか本物の修学旅行になっていました。車座の縁に加わって、熱量のままに自分をさらけ出していく経営者たち。熱く、蒼く、地域創生の胎動を共有してそれぞれの地域へ戻っていくのです。
丹後の寒く美しい冬はすぐそこ
さあ、丹後へいらっしゃい。
日帰りツアーでは味わえない風景、見えない物語へとTHE TANGOが誘って差し上げましょう!
原田 美帆
与謝野町在住
インテリアコーディネーター・現代アートスタジオスタッフとして活躍し、2015年からは丹後・与謝野町に移住と共にデザインスタジオ「PARANOMAD(パラノマド)」を設立。織物は彫刻という独自の視点でカーテンを始めとしたテキスタイルを制作。また、マニアックな所まで的確にレポートするライターとしても活躍中。そんな彼女の美と食の記事は今後とても楽しみであります。PARANOMAD