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風景泥棒がやってくる町 大京都芸術祭2020 A town where landscape rippers come to Kyoto Arts Festival 2020

ねえ 知ってる?
丹後には風景泥棒がやってくるんだって
彼らが盗むものってなんだろう
だって風景なんて盗めっこないよ

こんにちは、PARANOMADテキスタイルデザイナーの原田美帆です。京丹後市を舞台に2018年から始まったアーティスト・イン・レジデンスプログラム、その展覧会タイトルは「風景泥棒」。京都市内や東京からやってきたアーティストが数ヶ月間滞在し、地域の風景や人々と対話を重ねて作品に表現します。

ノコギリ屋根の工場に入ると、地面いっぱいにスコップが並んでいる。その向こうには、日本海を照らす経ヶ岬灯台の足元、石切り場の写真が見えます。観光スポットでもある白亜の灯台に注目したのは東京のアーティスト。スコップは労働という行為の象徴として、地域の人から集められました。明治時代の土木工事と現代の身近な労働がひとつの空間で繋がっていきます。もう一つ、灯台をテーマにした作品がありました。こちらは灯台のレプリカをモチーフにしています。海沿いに建つ市庁舎には、白亜の灯台のレプリカがあるのに町の人もあまり気が付いていないのです。世界各地の灯台にまつわる物語とともに、丹後の灯台が新しい物語を紡ごうとしているようでした。

急峻な山道を登り訪れた味土野(みどの)集落。明智光秀の娘、細川ガラシャが幽閉された土地として知られています。ここでアーティストが出会ったのは、夜の闇。まるで飲み込まれてしまいそうな真っ暗な闇の中に、ガラシャの姿を追った映像作品を作ったのは2019年。2020年はこの地に移住した若い女性に着目して、日光写真(サイアノタイプ)の技法で彼女の日常の消えゆく時を収めた作品を作りました。丹後半島の中でもひときわ奥地となる集落で、2人の女性の暮らしを見つめる。アーティストが毎年この地に通い、少しずつ物語が紡がれていく瞬間を共有しているようです。

北近畿エリアのローカルスーパー「にしがき網野店」の2階へ上がると、ナウでトレンディなニシガキのロゴ入りパーカーやTシャツ、靴下などのグッズが並んでいます。「アパレルショップ♪」と垂れ幕が下がり「にしがきテーマソング」が流れて、つま先から頭のてっぺんまでにしがきワールドに沈んでしまいそう。昨年まで実際に衣料品売り場として使われていたスペースに作品を展開したのは地元に住むアーティストと仲間たち。地域のアイコンであるにしがきという存在に着目して、地域の人たちが無意識に持っていたにしがき愛を目覚めさせてくれました。

他にも、漁港のそばに立つ神社にある芝居舞台と周辺の風景を切り取った作品、廃墟となったボーリング場で語られた物語など、総勢7組の作品が約1ヶ月に渡り展示されました。準備期間は半年近くにも及び、最後の1-2ヶ月は丹後住民の一員となるアーティストたち。「また帰っておいで」と食堂のお母さんに言われるくらい、地域にも馴染んできています。その作品を一度体験したら「これまでと違う視点」の鍵をもらって、そこかしこに眠る物語や隠れた存在を発掘したくなってしまいます。泥棒が盗んでいったのは、きっと「何にもないよ」という思い込み。つまらない意識や既成概念も鮮やかに盗まれてしまいました。

「丹後にはアーティストを触発するものがたくさんある。この自然の中で滞在制作をしたい人はたくさんいると思うの」。アートマネージャーを務める甲斐少夜子さんは、丹後に移住して2年目。自分自身も異邦者であるがゆえに、外からの目で地域の可能性を捉えていました。


京都府地域アートマネージャー 甲斐少夜子さん(撮影 田中実来)

広島県福山市出身の少夜子さんにはカナダや北欧を旅したり、実際に暮らした時期があります。フィンランドでひょんな事から知り合ったばかりの人とシェア生活をすることになり、ベリーやキノコを摘んだりしながら過ごした数週間。ヘルシンキで出会った人を尋ね、北極圏の村に出向いてサーメと呼ばれる原住民の暮らしと手仕事を見たこと。ちょっと覗いてみるだけのつもりだった工芸学校で織物を習うことになった日。不思議な縁に導かれて経験を重ね、作り手としての意識が目覚めていきました。

土地を訪ね、その土地を経験し、その土地でものを作る。少夜子さんは、レジデンスプログラムの原型となる道を、無意識のうちに歩んでいたのです。彼女の目標は「クリエイターたちが集う場をつくり、地域の人たちに気軽にアートやものづくりに触れてもらえる環境をつくること」。アーティストは土地からインスピレーションを得て、地域の人はこれまでの風景がどんどん盗まれてしまって、新しい風景に出会える。

「丹後には風景泥棒がやってくるんだよ」。そう世界に知られる日が、きっともうすぐやってきます。

地域の食堂に貼られた大京都のポスター

原田 美帆 与謝野町在住
インテリアコーディネーター・現代アートスタジオスタッフとして活躍し、2015年からは丹後・与謝野町に移住と共にデザインスタジオ「PARANOMAD(パラノマド)」を設立。織物は彫刻という独自の視点でカーテンを始めとしたテキスタイルを制作。また、マニアックな所まで的確にレポートするライターとしても活躍中。そんな彼女の美と食の記事は今後とても楽しみであります。PARANOMAD

 

INFORMATION

名称
大京都芸術祭2020
Name
Daikyoto geijyutusai 2020
URL
http://kyoto-research.com/daikyoto-kyotango2020
Url
http://kyoto-research.com/daikyoto-kyotango2020
名称 Name
大京都芸術祭2020 Daikyoto geijyutusai 2020
URL Url
http://kyoto-research.com/daikyoto-kyotango2020 http://kyoto-research.com/daikyoto-kyotango2020
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