みなさん、ご無沙汰しております!
「丹後ちりめん」担当のワタマサです。
残念ながら打ち切りにはなっておりません(笑)。
少し時間が空きましたので、まずは前回のおさらいからお話したいと思います。
「ちりめんじゃこ」の「ちりめん」は縮緬に由来する。
以上。
前回は初めての投稿だったので気合を入れたんですが、まとめるとたった1行になってしまいますね(笑)。
今回はさらに気合を入れて中身のある内容にしたいと思います。
前回のVol.1はこちらから
今回のテーマは「越後に縮緬問屋はない」です。
水戸黄門は行く先々で「越後の縮緬問屋のご隠居」と言う設定で身分を隠していましたが、残念ながら越後に縮緬問屋はありませんでした。
縮緬問屋があったのは越後ではなくもちろん丹後です。
そもそも「水戸黄門」の話自体がフィクションなので、設定もフィクションだったのだと思います。そんなことより私はお銀の入浴シーンが…。(笑)
冗談はほどほどにしまして…。
「丹後ちりめん」の話をする前に、まずは「縮緬」というものについてお話します。
「縮緬」とは経糸に撚りの無い生糸、緯糸に強い撚りのかかった生糸を使って、平織で織りあげます。この時にはまだ縮緬特有のシボ(生地の凹凸)はありません。真っ平らな生地でしかも結構硬くてゴワゴワしています。この生地を業界人は生機と呼んでいます。
生機がなぜ硬くてゴワゴワしているかと言うと、生糸にはセリシンというタンパク質が25%ほど含まれているからです。
まずは下の図をご覧下さい。これは蚕さんが吐いた繭糸1本の断面図です。
繭糸の断面図
蚕さんが吐いた糸は図fのフィブロインというタンパク質と図sのセリシンというタンパク質でできています。みなさんがご存知の柔らかな絹はフィブロインでできています。逆にセリシンは蚕さんが吐いた瞬間はゼリー状なのですが、乾くと硬く固まりまる糊のりのような性質を持っています。
このセリシンの特性を活かしたのが「縮緬」です。
生糸をお湯で煮るとセリシンがゼリー状に戻ります。その生糸をセリシンが乾いて固まらないように、濡れたままの状態で撚りをかけます。強いものだと1m間に4,000回も撚りをかけます。蚕さんもびっくりですね(笑)。
撚りをかける作業を撚糸(ねんし)と言うのですが、水に濡れた状態で撚るので、湿式(しつしき)撚糸(ねんし)とか水撚(みずより)と言います。「八丁(はっちょう)撚糸(ねんし)」と呼ばれる撚糸がこれにあたり、この八丁撚糸こそが「縮緬」の技術そのものです。
水に濡れた状態ではゼリー状のセリシンは、乾くとまた固まります。撚糸をしたあとで固まるので糊のように撚りをとめてくれます。
撚りが止まっていないと糸がビリ付いて織ることができません。
「縮緬」はこの八丁撚糸を緯糸に使って織ります。そして、織りあげてからセリシンを落とします。セリシンを落とす工程を精練と言いますが、「縮緬」の大きな特徴は生機の状態でセリシンを落とすことにあります。
突然ですがここでクエスチョンです。
「縮緬」の生機を精練して、セリシンを落とすとどうなるのでしょうか?
- 誤解が生まれる。
- 愛が生まれる。
- シボが生まれる。
難問ですね~(笑)。
正解者の中から抽選でKUSKA×WATAMASAのコラボネクタイがもらえるかもしれません。ここはプロデューサー楠氏の心意気次第です(笑)。
それではみなさん、また次回お会いしましょう。
渡邊正輝
丹後・与謝野町岩屋出身、株式会社ワタマサの4代目、ジャカード織りを得意とし、お召しちりめんは昨年のNHK紅白歌合戦のトータス松本さんにも着用されるほど最高級の風合いを表現している。また、丹後のちりめん王子との愛称で皆に呼ばれる程、丹後ちりめんや絹織物に造詣が深い。文学部出身でもある彼の連載は今後も楽しみである。