はじめに
丹後の与謝野町で丹後ちりめんの織元をしています、株式会社ワタマサの渡邉正輝と申します。当社は創業大正7年、今年2018年で創業100周年を迎えました。
創業者は渡邉正雄、私の曽祖父にあたります。長男が正の字をもらっているので、近所では「渡正さん」とあだ名のような感じで呼ばれていました。
今でいう「キムタク」と同じです。(笑)
それで社名が「ワタマサ」になったのですが、丹後はそういう社名の機屋が多いです。地域に同じ名字が多い田舎ならではだと思いますよ。
ちなみに私のあだ名もワタマサです。
あ、ちなみに○○マサという社名の機屋も多いので間違えないで下さいね。(笑)
それでは、お話していきたいと思います。
どうぞよろしくお願い致します。
丹後ちりめんについて語る上で、必ずお話しないといけないことがあります。
丹後ちりめんが作られるようになって間もなく300年を迎えますが、その長い歴史のなかで最大のライバルと言っても過言ではないと思います。
それは「ちりめんじゃこ」です。
もともとは雑魚を干しているところが、縮緬のシボのようにきれいだったことから「ちりめんじゃこ」と呼ばれるようになったんです。
漢字で書くと「縮緬雑魚」。
それが今では「ちりめんじゃこ」と書かず「ちりめん」と表記されることもしばしば。本家のちりめんを脅かす存在です。
私ごとで恐縮ですが、私は丹後の高校を卒業したあと、京都市内の大学に通いました。
遠方の方はご存知ないかもしれませんが、丹後地域は一応京都府です。ですが京都市までは100km以上あり実際は全く別の地域です。
当然、マンションを借りて一人暮らしをして通っていたのですが、そんな田舎者は硬派なテニスサークルに入って真面目な大学生活を送っていました。
サークルの仲間とも打ち解けて、たまたま私の家業の話になりました。
私「ひいじいさんの頃から丹後ちりめんを作ってんねん(偽関西弁)」
仲間「え~、めっちゃ凄いやん!」
女A「私好きやで!めっちゃ美味しいやん!」
私「そうそう美味しいやろ~!ってそれはじゃこやんけ!」
関西人はボケるのが当たり前なので、冗談かと思ってました。
すると…。
女A「え?じゃあ丹後ちりめんって何?」
私「え?ほんまに知らんの?」
女A「うん。」
絹織物生産数量№1やのに…。
国内最大の産地やのに…。
丹後では小学校の授業で習ったのに…。
友禅の本場京都やのに…。
丹後ちりめんを知らないなんて…。
あ、ちなみに女Aは現在の私の妻です。(笑)
どうでも良いからさっさとちりめんの説明をしろ!と声が聞こえますが、最後に言わせて下さい。
「ちりめん山椒」って言うな!
「じゃこ山椒」と言え!
以上です。
打ち切りにならなかったら次回からちゃんと丹後ちりめんのお話をします。
渡邊 正輝
丹後・与謝野町岩屋出身、株式会社ワタマサの4代目、ジャカード織りを得意とし、お召しちりめんは昨年のNHK紅白歌合戦のトータス松本さんにも着用されるほど最高級の風合いを表現している。また、丹後のちりめん王子との愛称で皆に呼ばれる程、丹後ちりめんや絹織物に造詣が深い。文学部出身でもある彼の連載は今後も楽しみである。