「うわぁー、キレイなでっかいプールだね!!」
これは生まれて初めて“海”を見た都会の小学生の言葉
そんな素直な感想に、思わず笑顔になる。
高校3年生で部活を引退してから、大学を卒業するまでの5年間、僕は毎年夏になると海の家でアルバイトをしていた。
陽の光にきらきらと輝くコバルトブルーの海
夏の海は、少し離れた高台からも海の中で泳いでいる魚が見えるのではないかと思えるほど透明度が高い、朝と夕方、夜、そして季節によって海の表情が全く違う。
一刻一刻と少しずつ変化していくその表情をいつまでも眺めていたくなる。
海水浴に来たお客さんが海の青さと美しさに驚き、笑顔になる瞬間が僕は好きだ。
「キレイな海だね」って言われると、まるで自分の家族が褒められたように思わず誇らしくて嬉しい気持ちになる。
ここは、京都府北部の京丹後市にある琴引浜
今回は、この美しい「琴引浜」と「はだしのコンサート」について、少し紹介をさせていただきたいと思います。
琴引浜の最大の特徴は、何と言っても砂浜が鳴くということ。
乾いた砂の上を、踵を擦り付けるように歩くと、「キュキュッ」と音を奏でる鳴砂のビーチ
場所によっては、砂浜の下の岩に反響し「ドンドン」と響く音を聞くこともできる。
何故、こんな不思議な音が出るのか?
その理由は、鳴砂の砂浜には他の砂浜に比べて石英が多く含まれていること。
そしてキレイな水と空気の中で十分に洗われることで、石英の表面の摩擦係数が極端に大きくなり、そこに力が加わることで砂粒がバラバラではなく一団となって振動することで音が出るそう。
しかし、鳴砂はタバコの灰やBBQの炭の燃えカスなどで少しでも砂が汚れてしまうと、たちまち鳴らなくなってしまう。
環境汚染にとても敏感に反応する鳴き砂は、健全な自然環境が保たれているバロメーターであるといわれています。
(琴引浜の鳴砂・琴引浜鳴き砂文化会館にて)
かつて、日本の海岸の多くは鳴砂の浜であったと言われていますが、海浜の汚染や海岸の開発などにより、白砂青松といわれた海岸は少なくなり、現在鳴砂として確認されているところは、日本全国で30か所ほど。
そんな繊細な鳴砂を守り、美しい海浜を次の世代へ受け継いでいくために、琴引浜がある地元掛津区では「琴引浜の鳴り砂を守る会」を設立し、地域が一丸となって、様々な環境保全の活動を行ってきました。
1994年には、鳴砂の環境保全活動を多くの方に知ってもらうために、趣旨に賛同してくれたアーティストとともに、環境コンサートとして第1回目の「はだしのコンサート」を開催。
「あなたの拾ったゴミが入場券」を合言葉に、コンサート参加者も一緒になって海岸を清掃する活動を取り入れた。
1997年には、ロシア船籍のタンカー「ナホトカ号」が島根県沖で沈没し、大量の重油が流出した。琴引浜も砂浜全体が重油で覆われ、鳴砂消滅の危機に襲われた。
まだ雪が降る1月、重油の撤去作業には地元有志や町役場職員をはじめ、日本全国から多くのボランティアが集い回収を行った。
タンカー沈没事故の2年前に起こった阪神淡路大震災で助けてもらったお礼がしたいと京阪神からも多くのボランティアの方が駆けつけてくれた。
回収作業の延べ従事者は12,709名、回収した重油の量は、土嚢袋16,619袋にも及んだ。
約2か月後、多くの方の協力で琴引浜は再び元の美しい砂浜の姿を取り戻した。
1999年、琴引浜は世界初の「禁煙ビーチ」として砂浜での喫煙を禁止した。
2007年には、琴引浜区域が国の天然記念物及び名勝に指定される
2010年、山陰海岸ジオパークが世界ジオパークに認定。鳴砂の環境保全活動を後世に伝えるために地域住民指導者やガイド養成のための講座開講。
現在の琴引浜ガイド団体「シンクロ」設立へと結び付く
(琴引浜に打ち上げられた漂着ゴミ)
(2017年京都府立網野高等学校美術部による漂着ゴミを使ったアート作品)
(参加者によるビーチクリーンナップ)
そして、2018年「はだしのコンサート」は25年目を迎えます。
今年のテーマは「マイクロプラスチックから地球を救え!」です。
“マイクロプラスチック”とは直径5mm以下のとても小さなプラスチックのごみです。流木や海藻であれば、微生物などの働きでやがては分解され、二酸化炭素や水などに戻っていきますが、プラスチックはいくら小さくなっても、分解されなくなることはありません。しかも海の生き物がえさと間違えて食べてしまうことがあり、海の生態系への深刻な影響が心配されています。そんなマイクロプラスチックごみの存在とその脅威を日本のみならず世界へと発信することを目的に開催されます。
当日会場では、「はだしのコンサート」の趣旨に賛同いただいたアーティストたちによる自然環境を考える想いを歌に乗せたステージをはじめ、ビーチクリーンナップ、マイクロプラスチックを使ったワークショップ、ナホトカ号重油災害写真展示、そして地元である島津小学校の児童たちによるフィナーレ「琴引浜によせて」の合唱などが行われます。
ナホトカ号重油流出事故の教訓、協働・未来に向かう力を活かしながら先人たちから引き継がれてきた鳴砂の環境保全活動やはだしのコンサートの足跡をこれからの未来を生きる次世代に伝えたい。
そして、琴引浜にお越しのお客さまと関わる全ての皆さまへの感謝の気持ちを伝えたい。
そんな想いが込められた「はだしのコンサート」にあなたも参加しませんか。
あなたの拾ったゴミが入場券です。
25thCONCERT of HADASHI
2018.6.3(SUN)AM9:00 START
開催場所:京都府京丹後市網野町掛津琴引浜特設会場
主催:はだしのコンサート実行委員会
後援:京丹後市
協力:掛津区、京都府立網野高等学校、京都府立久美浜高等学校、京都府立峰山高等学校、京丹後市立網野中学校、京丹後市立島津小学校、琴引浜鳴り砂を守る会
【参加アーティスト(予定)】
秋人、ACE、アルケミスト、山元サトシ(fromキッサコ)、野田順子
(オープニングアクト:和太鼓DON、Hula Lehua、ぱるてぽるて)
長瀬 啓二(Keiji Nagase)
京丹後市網野町出身
大学在学中にオーストラリアへ留学しその経験を基に2017年に「旅は“日常”と“非日常”の交差点」をコンセプトに外国人旅行者へローカルならではの出会いと体験、そしておもてなしをサポートする “Tangonian”を設立しグローバルな視点で新しい丹後の旅のカタチを発信している。また、元中学校英語教員・元鉄道会社勤務という肩書きも実に面白い。