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丹後の魔法にかけられて ウィスキーナイト冬・伊根編 Magic of Tango: Whiskey Night Winter, Ine

肺に冷たい空気が満ちて 冬の寒さを味わう
凍えそうな鼻の先には星々が瞬いて 冬の美しさを知る
私たちを日常と非日常の間に導くのは
グラスに揺れる琥珀色のウィスキー

こんにちは、PARANOMADテキスタイルデザイナーの原田美帆です。冬の丹後と言えば灰色の空、雪、日本海の荒波…寒く厳しい気候が思い浮かぶでしょうか。ですがこの風土は、同時に素晴らしい風景も見せてくれます。例えば、グラスに映り込む漁村なんていかがでしょう。

冬の埠頭に立ち、ウィスキーを飲む。その味わいに酔いながら、身体の感覚が冴えてくるのが分かります。わずかな月明かりが降り注ぎ、闇を忘れた視覚に黒が染み込む。夜の海がうごめくのを眺めて、畏怖を感じる。星の瞬きの多さに、ここが周りを海で囲まれた半島であることを思い出す。

ウィスキーとペアリングの料理を味わう「ウィスキーナイト」。3回目となる2019年の開催地は舟屋群で知られる伊根町です。小さな漁村にウィスキーの魔法を求めて、遠方からもたくさんのゲストが訪れました。一体どんな魔法にかかってしまうのか、その秘密は2018年に京丹後市網野町遊(あそび)地区で開かれた「丹後を呑むとき ウィスキーナイト冬・海編」でお確かめください。


2018年のウィスキーナイト 京丹後市網野町遊地区にて

遊地区では波が打ち寄せる高台で、灰色の日本海を見渡しながらウィスキーを味わって。一方、伊根町では穏やかな海を前に、夜空に包まれてウィスキーを飲み干して。味覚には天候・気温・体調などさまざまな条件が影響を与えますが、「環境」も極めて重要な鍵になります。そう、ゲストは風景をまるごと味わっていたのです。


伊根湾のいつもの風景

都市部からの訪問者にとっては、自然豊かな丹後にその身を置くだけで心の変化があったでしょう。大きく開いた空に、静かな道路。喧騒と離れた穏やかな空気の中で、どんなに洒落たバーを訪れても飲むことのできない味に驚く。この味を生み出す風土と共に、それを発見して提供するプロフェッショナルたちが揃っていることに二度目の驚きを覚える。

日々の暮らしの中で流れてしまう時間から、特別な瞬間を切り取る。丹後に住まう人たちにとっては、見慣れた景色に改めて惚れなおすような体験がもたらされました。今まで気がつくことのなかった可能性を、すくい上げてくれる仲間がいる。驚きと共にこみ上げるのは、こんなに素晴らしい場所にいるんだという喜び。

海に向かって歩き、ウィスキーを飲む。たったそれだけで、私たちの感覚は解放されてほんものの体験が生み出されました。「土地が秘める魅力は、こんなシンプルな行為で味わうことができるんです」。主催者のひとり、Bar Beliniの田茂井義信さんは、自身の店を始める前から丹後の「文化」について思いを巡らせてきました。今では信じられませんが、15年前には地酒を飲む習慣も廃れかけていたと言います。地域の人に理解されないと「その土地の文化」にならない。そうしないと外へ発信するための土台も育たないと考え、自ら酒蔵を何度もめぐり地酒の魅力を伝える取り組みを10以上年続けてきました。そうやって、少しずつ土地への学びを深め、生産者たちと繋がり、理解者を得て、共に動くプレイヤーが増えてきたのです。


Bar Belini 田茂井義信さん

もう一人の主催者、tabel tableのハミルトン純子さんは5年前に丹後に移住されました。生まれ育ちは京都市内ですが、祖母の暮らした丹後を頻繁に訪れていたと言います。アイルランドでの6年に及ぶ海外生活の後、日本帰国の地として幼き日々の原風景であった丹後を選びます。今日の丹後にこれほどまで食の可能性があるとは、その時には思いもよらなかったそう。異文化を横断してきたキャリアが、丹後というフィールドで新たな火を灯しています。


tabel table ハミルトン純子さん

伊根で会場となった「Cafe & BB guri」を主催する當間一弘さん一家も関東からの移住です。地域の人と旅人が集うようにと名付けたスペースは、あの夜たしかに人々の交わりで満ちていました。丹後に惹きつけられた人々が、これまでに築かれた厚みの上に、ウィスキーナイトというかたちで丹後の魅力を発信し始めています。


Cafe & BB guriエントランス

だからこそ、ウィスキーナイトには特別な魔法がかけられる。そこに居合わせた人々は目が覚めても魔法が解けることはありません。だって、もう丹後の可能性を知ってしまったのですから。次は、あなたに魔法をかけて差し上げましょう。

Whiskey Night 2019 Menu

世屋の猪のスープ ウィスキーの香りをまとわせて

スモークした鯖のパテアイリッシュソーダブレッドを添えて

丹後の有機野菜と焼き燻製モッツァレラ

蒸籠蒸し牡蠣 ウィスキー添え

魚のタルタル特製伊根満開酒粕とスパイスのペースト仕上げ

たらのトマト煮込みのパイ包み焼き

クラシックアイリッシュシチュー

チョコブラウニーとさつまいもクリームのトライフルベイリーズの香り

ウィスキーの香りのシュトレン

写真提供 京近 淳氏

原田 美帆 与謝野町在住
インテリアコーディネーター・現代アートスタジオスタッフとして活躍し、2015年からは丹後・与謝野町に移住と共にデザインスタジオ「PARANOMAD(パラノマド)」を設立。織物は彫刻という独自の視点でカーテンを始めとしたテキスタイルを制作。また、マニアックな所まで的確にレポートするライターとしても活躍中。そんな彼女の美と食の記事は今後とても楽しみであります。PARANOMAD

INFORMATION

名称
バーベリーニ
Name
Bar Belini
住所
京都府京丹後市峰山町杉谷898
Address
kyoto,kyotango,mineyama,sugitani898
名称 Name
バーベリーニ Bar Belini
住所 Address
京都府京丹後市峰山町杉谷898 kyoto,kyotango,mineyama,sugitani898