ぷち ぷち ぷち
口の中で蕎麦の実が弾ける
ぷち ぷち ぷち
みんなで育てた蕎麦はおいしいね
ぷち ぷち ぷち
楽しい丹後の暮らしが詰まっているよ
こんにちは、PARANOMADテキスタイルデザイナーの原田美帆です。令和弐年 弥生・晴明・玄鳥至(つばめきたる)のある日、キコリ谷テラスで「丹後の蕎麦を楽しむ会」が開かれました。弥生とは3月、晴明は二十四節季のひとつで万物が清々しく明るい頃をさし、玄鳥至はその初期を表す七十二候の言葉です。メニューに添えられた瑞々しい言葉に心を満たされて、コースが始まりました。
この日のメニューは…伊根町で水揚げされた「〆鯖」、つづく「揚げ蕎麦サラダ」には京丹後SORA農園・HandS farm・IHATOVの新鮮な有機野菜をたっぷり、「鶏卵蕎麦」は伊根町にある三野養鶏場の純国産卵もみじでふんわりまとめられ、「旬の天麩羅」には蕗の薹をはじめとした春の食材が集まりました。
「十割盛り蕎麦」は、つなぎがないのにつるっと喉ごしも良く、噛むほどに滋味深い味わいが広がります。デザートは「そばがきぜんざい」。ほんのり温かいあんこと一緒にもっちりとしたそばがきを食べ終える頃にはお腹もいっぱいです。
主役である蕎麦は「TANGO TANGO TANGO 」というグループが育てたもの。TANGO TANGO TANGOは2018年12月に立ち上げられた団体で、農家・大工・機屋などさまざまな生業のメンバーが「丹後半島をより素敵な場所にしたい」という想いの元に集まりました。合言葉は「GO LOCAL, KEEP WIRED」、日本語にすると「地域の暮らしを楽しもう、変わり者で居続けよう」。もしくは吉田松陰の言葉を引用して「諸君、狂いたまえ!」とも。常識や固定観念にとらわれず、何かを成し遂げる想いを持ち続けるぞという決意を込めたメッセージです。これまでにも地域のイベントに参加したり、ホップ畑でレストランを開いたり、阿蘇海の牡蠣殻から作った漆喰のワークショップを行ったりと幅広い活動をしています。
グループを立ち上げるきっかけとなったポートランド視察での一コマ
蕎麦作りのきっかけは、京丹後市にあるナポリ料理のバールuRashiMa。店主の藤原英雄さんが「イタリアでは一反のトマト畑を皆で育て、トマトソースを作り、分け合う文化がある」と話したことから。「丹後でもやりたいね」とアイデアが生まれ、グループ内には農事組合が生まれます。彼らが大切にしていることは「分かち合い」。自分たちの手で共有したいものを生み出し、関わった人たちが分かち合えるものであること。この蕎麦作りも農事組合を中心に種まきを、収穫はメンバーの家族も力を合わせて終えました。
初めての蕎麦作りは「楽しかったけど思ったほどの収量にはならなくて」と、農事組合のひとり大場亮太さん。通常、蕎麦農家は種を直に蒔くことが多いそうですが「台風で倒れやすいため、僕たちは畝を立てて支柱を立てる方法をとりました。そうすると通路幅も必要になって」。そして、収穫後には外皮を外し、不純物を落としてから脱穀して…「製粉までにもたくさんの工程があって、その度にどんどん量が減ってしまいました」。そう話してくれた森和哉さんも農事組合のメンバーです。一反の畑から取れた蕎麦は約30キロでした。関わってくれた人、この取り組みに興味を持った人に食べてもらいたいという思いで「丹後の蕎麦を楽しむ会」を企画されます。蕎麦打ちと料理は佐々木拓也さん。京丹後の弥栄地区で有機農業や料理の修行をされてきました。
どこまでも「GO LOCAL」な蕎麦を楽しむ会に、参加者も満足の笑みが浮かびます。だって、みんな丹後が大好きなんですもの。美しき風土も、豊かな食も、こんな機会を作ってくれる仲間も、みんなみんな「TANGO PRIDE」。私たちの丹後の誇りなのです。
TANGO TANGO TANGO はこれからもGO LOCAL. KEEP WIREDを合言葉に、丹後の衣食住環境の持続的な発展に貢献する取り組みを行います。イベント情報などはFacebookページにて随時発信中。「分かち合い」の輪は、みんなに開かれています。
写真提供TANGO TANGO TANGO
原田 美帆 与謝野町在住
インテリアコーディネーター・現代アートスタジオスタッフとして活躍し、2015年からは丹後・与謝野町に移住と共にデザインスタジオ「PARANOMAD(パラノマド)」を設立。織物は彫刻という独自の視点でカーテンを始めとしたテキスタイルを制作。また、マニアックな所まで的確にレポートするライターとしても活躍中。そんな彼女の美と食の記事は今後とても楽しみであります。PARANOMAD