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蒼き矢が射る 伝統を想う心の輪 ARLNATA part1 A circle of heart that thinks of the tradition that the blue arrow shoots ARLNATA part1

ひとめで惹きつけられるフォルム
身体を覆う生地は
意志を持ったように訴えかけてくる
日本のものづくりの真髄を見せてあげようと

「“アルルナータ”はアパレルのブランドではなく、プロジェクトなのです」。2018年にSTUDIO ALATA(アラタ)を設立した寺西俊輔さん、千慈さんを大阪のスタジオに訪ねました。ヨーロッパでデザイナーとしてキャリアを磨いていた俊輔さんが日本での独立を選んだきっかけには、丹後との出会いもあったと言います。

ARLNATA 寺西俊輔さん、千慈さん

フランス・エルメス社に俊輔さんが入社したのは2015年初夏。日本とヨーロッパで複数のハイブランドに勤めて腕を磨き、厳しい入社テストを経て合格の知らせを手にしました。俊輔さんの役職はデザイナーでしたが、同時にパタンナーとしての能力も見込まれ2つの仕事を兼任していました。それは珍しいケースで、デザイン業務を行うフロアとパターン作成やミシン作業を行うフロアを忙しく行き来していたそうです。ある日フロアマネージャーに「デザイン室にミシンも置きたい」と相談したところ、「ここはデザイン室よ」と返答されます。その一言には、デザイナーとそれ以外の職業の間にある格差が凝縮されていました。「デザインに比べて、パターン作成には圧倒的な仕事量がある。それなのにデザイナーと差をつけられている」と違和感を覚えたそうです。同時に、エルメスで働いていると町の人に話すと、ブランドにまつわる思い出を話してくれることも多く、広く愛される存在だと知りました。

取材風景 手描きのパターンが並ぶ作業机

ラグジュアリーブランドの歴史や構造について思いを巡らせていた頃、日本のテキスタイルと運命の出会いを果たします。パリでは毎年プルミエール・ビジョンと呼ばれる生地の展示会が開かれていました。会場を訪れ、日本三代紬の牛首紬を目にした瞬間「なんときれいな色」と初めて着物の世界に引き込まれます。それまで知っていた日本の生地はどこか色彩に欠けていました。ベーシックな製品を見せて「この技術を使って何でもできる」と説明する日本の生地メーカーよりも、すぐに欲しいと思わせる色彩と質感に富むイタリアの生地メーカーに惹きつけられる。デザイナーと組み最新のトレンドが盛り込まれた海外メーカーの生地に比べて、日本の生地メーカーは提案力に乏しい。そう感じてきた俊輔さんにとって、着物の生地は類まれな技とデザインが一体となった逸品でした。加えて、豊かな色彩はデザイナーによる指定ではなく、職人その人が生み出していることに衝撃を受けたのです。「これだけの感覚を持ち、このレベルの手仕事を現代で成しているところは世界のどこにもない!」。

同じ会場には、丹後から民谷螺鈿*1や遊絲舎*2も出展していました。螺鈿や藤の見たこともない素材を織りなす技術、シルクとの繊細な色合わせにも驚きます。「僕が勝負するなら着物しかない」。独立を決意したのはこの出会いの直後、2016年の冬。入社から1年も経っていませんでした。

2019年には丹後産地の織物から生まれたコレクションを発表

「実は、民谷さんとは展示会の前夜に話をしていたんですよ」。知人のデザイナーの紹介で、パリを訪れていた丹後の織元たちの食事会に参加しました。初めて出会った夜に、二人は真正面から熱い議論を交わしたそうです。ファッション業界は中世貴族社会の延長にあり、その中で生地メーカーの存在はどう位置づけられるのか。ヨーロッパ市場では、ブランドとデザイナー名のみが世に出て職人や工房は表に出られない。このピラミッドをひっくり返すために日本で市場を作った方がいいと意見を述べながら、自分が行動で実証したいと熱い想いに火が付きました。

2019年 丹後織物のコレクション 襟に螺鈿織が使われている 

2018年4月にエルメス社を退社し、日本に帰国。共にヨーロッパで腕を磨いたパートナーの千慈さんとSTUDIO ALATAを立ち上げました。職人その人がブランドの価値となり、次世代に伝統産業を伝える。日本のものづくりを世界に問うプロジェクトとしてARLNATAは産声をあげました。

蒼き矢が射る 伝統を想う心の輪 ARLNATA part2」に続きます。

トップ写真 ARLNATA提供(撮影:菱川 陽亮(RIDE))
*1 古の美を現代に織り上げる 民谷螺鈿
*2 丹後の美と自然をまとう 遊絲舎 も合わせてご一読ください

原田 美帆 与謝野町在住
インテリアコーディネーター・現代アートスタジオスタッフとして活躍し、2015年からは丹後・与謝野町に移住と共にデザインスタジオ「PARANOMAD(パラノマド)」を設立。織物は彫刻という独自の視点でカーテンを始めとしたテキスタイルを制作。また、マニアックな所まで的確にレポートするライターとしても活躍中。そんな彼女の美と食の記事は今後とても楽しみであります。PARANOMAD

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